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コラム

床矯正とは

2024.05.02

床矯正について

Khoury orthodontie

一般的な矯正治療は歯列を整える為のスペースを作るために歯(永久歯)を抜きます。ですが、床矯正治療は歯を抜かず「顎を広げて」歯を並べる治療法です。

床矯正とは、成長期にある子どもの顎の骨の成長を促し、顎の骨を広げて歯並びを整える矯正治療です。一般的に、6歳から11歳頃の子どもを対象に行われます。

あまり馴染みがないかもしれませんが、実は「床矯正」は昔から一般的に行われている矯正治療のひとつです。もしかしたら「子供のころにしていたかも」というパパさんママさんもいらっしゃるのではないでしょうか。

最近のお子様の歯並びが悪くなる原因の一つとして、硬い食べ物を食べず柔らかいものを好み、顎の骨が大きく育たず、顎の骨が小さいことが挙げられます。顎の骨が小さいと、歯がきれいに並ぶための十分なスペースが確保できません。そのため、狭いスペースに歯が押し合って生えてしまう為歯並びが悪くなります。

顎の骨の大きさが原因で歯並びが悪い場合、大人になってから歯並びを矯正しようとすると、顎の骨が小さいが故、健康な歯を抜歯したり顎の骨の切除手術が必要になったりするケースがあります。

一方で、子どものうちに床矯正をすれば、顎の骨の成長をコントロールして適切に広げ、歯がきれいに並ぶための十分なスペースを確保できます。将来的に、抜歯や顎の骨の切除手術を伴う矯正治療を避けられる可能性が高くなるのです。

床矯正は歯並びをよくするための土台作りができる治療です。

⚪︎もしかして矯正が必要?

⚪︎本格的なワイヤー矯正以外の矯正方法を詳しく知りたい

⚪︎子供の歯を抜かずに矯正してあげたい

⚪︎ 昔、自分がやって綺麗に並んだから子供にもやらせてあげたい

⚪︎歯並びを綺麗にしてあげたい

⚪︎将来綺麗な歯並びにする為に今できることはある?

このようにお子さまの矯正治療を考えているなら、歯科医院とご相談の上まずは床矯正から始めてみるのも選択肢のひとつです。

どのような治療法なのか、どのような場合が適応となるのか、メリットやデメリット、使用方法などわかりやすくお伝えしていきます。

床矯正の使用方法

床矯正とは、ネジの付いた装置を使用します。このネジを回転させることにより少しずつ顎を拡げ、歯を正しい位置に移動します。床矯正で使用する装置はご自身で簡単に取り外すことが出来ます。

①装着時間について

装置は1日の入れている時間が全部合わせて14時間以上になるようにしましょう。装着時間が長いほど良い結果が得られますが、長い装着はお子様のストレスになるかもしれません。その為、最初は無理につけず、徐々につける時間を長くして、14時間以上つけれるように練習をしていきましょう。最低でも最初の慣れないうちは、就寝時+日中1時間の約8時間は装着してもらうようお願い致します。
装着時間が確保できるならば、日中の学校へ行く 時間帯は装置を外していても問題ありません。ただし、歯は元に戻ろうとする力が働くので、1日の半分以上装置を外していると歯が変な方向に動いてしまいます。
歯が移動すると矯正装置と合わなくなるので、治療が進まない、装置が壊れる、などのトラブルが起きるので注意が必要です。

②床矯正装置の使い方

床矯正装置は、プラスチック製のプレートにスクリュー(ネジ)やスプリングなどがついており、スクリューを回すと装置の幅が広がるようになっています。このネジを巻いてスクリューを移動させることで、装置を少しずつ拡大出来るようになっています。成長段階に合わせて少しずつ広げた装置を口に入れておくことで顎の骨の成長を促し、永久歯がきちんと並ぶスペースを確保していきます。徐々に幅が広がっていく装置に合わせて顎に力をかけていき、骨を拡大するというしくみです。

ネジは90度に1つ穴があいています。この穴にキー(ネジを巻く棒)を差し込み、床矯正装置に矢印がついていますので、矢印(→)の方向へ回します。週に何回回すのかなどは主治医とご相談の上となります。

ネジの巻き方

また、矢印と反対方向へネジを巻くと巻き戻すことが出来ます。装置が合わない時や、痛みがある時、誤って巻きすぎてしまった時などは、逆方向に回していただき巻き戻して下さい。

どのような歯並びが対応できるのか

  • 叢生(歯並びがデコボコしている)
  • 交差咬合(噛み合わせが一部だけ反対になっている)
  • 上顎前突(出っ歯)
  • 下顎前突(受け口)
  • 上下顎前突(口ゴボ)
  • 開咬(口を閉じた時に上下の前歯に隙間が生じる)
  • 八重歯(犬歯が外側に飛び出している)
  • 過蓋咬合(上の歯が下の歯に深く被さっている)

ただし、床矯正は顎の骨を拡大することで、歯が綺麗に並ぶためのスペースを確保する治療です。重度の不正咬合の場合は、床矯正だけでは治療が難しいと判断されるでしょう。

床矯正での治療が可能かどうかの判断をご自身でするのは難しいため、カウンセリングで歯科医師に相談しましょう。

床矯正のメリット

①虫歯になりにくい

ブラケットやワイヤー矯正などは、自分で取り外すことができません。矯正装置がついているため、歯磨きがしにくく食べ物のカスや歯垢が溜まりやすく虫歯ができやすい為、矯正治療中に虫歯になることが多々あります。
床矯正であれば、自分で取り外しができるため、普段通りに歯磨きができます。そのためワイヤー矯正などの矯正装置を歯に直接装着する方法と比べて歯磨きも行いやすい為、虫歯になりにくい事が言えます。

②好きなものを食べられる

歯に矯正装置を固定するワイヤー矯正などの方法では、固いものや粘着性のある食べ物を避ける必要があります。栄養が偏る原因にもなるため、保護者としては献立を考えるのに苦労してしまいますが、床矯正は飲食時に取り外しが可能であるため、好きなものを食べられます。

③抜歯をせずに歯並びを改善する事ができる

床矯正の最大のメリットは、永久歯の抜歯が不要であることです。歯並びが悪くなる原因の一つとして、顎の骨が小さいことが挙げられます。その為床矯正では、顎の骨の成長をコントロールして徐々に広げることで、歯が綺麗に並ぶためのスペースを確保できるため、永久歯を抜歯をせずに歯並びの矯正が可能になります。また、子どものうちから床矯正をしておくことで、大人になってからの矯正治療が不要になるケースもあります。抜歯や顎の骨の切除を伴う矯正治療を回避できることもあるでしょう。健康な歯を抜歯することは、決してよいことではないと考えています。できるだけ健康な歯を守るためにも、当院は早めの床矯正治療に取り組んでいます。

④矯正装置を取り外しする事ができる

床矯正は、簡単に矯正装置を取り外しが可能な為、学校の授業「国語、音楽、英語等発声が必要な授業など」や体を動かしてスポーツをする時、また記念写真を撮る際なども、矯正装置を一時的に取り外せるので見た目を気にする必要がありません。

⑤治療の痛みが少ない

痛みを伴いそうだと思われがちな矯正ですが、床矯正は子どもの成長に合わせて徐々に顎の骨を広げる矯正治療のため、歯を動かす時の抵抗が少ないので、痛みが少ないといわれています。ワイヤー矯正よりも弱い力で顎の骨をゆっくり広げているため、ワイヤー矯正と比べて痛みが出にくいのも利点です。また、顎関節なども柔らいので矯正治療で得た新しい咬み合わせに無理なく順応できます。

床矯正のデメリット

①後戻りすることがある

床矯正は顎の成長を利用した矯正方法ですが、矯正治療後に装置を取り外すと、後戻りする可能性があります。これは、顎の成長と、口周りの筋肉の使い方や生活習慣などが関係しているためです。また、矯正装置を頻繁に外してしまい、計画通りに進まず、治療期間が長引くことも予想できます。その為床矯正後歯が動かないように保定装置をいれていただきますようお願い致します。

②適用できるタイミングが限られている

床矯正の対象は、6歳から11歳頃の子どもです。床矯正で治療できる時期は限られています。床矯正は、前歯4本が永久歯に生えそろわなければ適用できません。かつ、永久歯が生え揃うまでの時期とされている為、歯が全体的に永久歯へと生え変わっていると、床矯正を適用できない可能性があります。そのため、床矯正を検討している場合は、早い段階で歯科医院への相談をお願い致します。

③治療効果が患者様で左右されてしまう

床矯正は、矯正装置を簡単に取り外すことができることがメリットです。しかし、計画通りに治療を進めるためには、1日14時間以上装着する必要があります。矯正装置を長時間外したままでいたり、頻繁に矯正装置を外したりしていると、計画通りに治療が進まず治療期間が長引く可能性があるため注意が必要です。また、矯正治療中は周囲のサポートが必要となるため、子どもが矯正装置を決められた時間装着できているか、周囲の大人がチェックする事が大切と言えます。

④歯並びの細かい所までは治す事ができない

床矯正は、顎の骨を広げて歯をきれいに並べるためのスペースを確保することが目的の矯正治療です。歯の位置を調整する治療ではないので、床矯正だけでは歯並びを完全にきれいに整えることはできません。そのため、歯並びの細かい調整をしたい場合や、歯を大きく移動する必要がある重度の不正咬合の場合は、ワイヤー矯正を行います。

⑤発音がむずかしい

床矯正では、矯正装置の違和感があることや舌の動きが制限されることで、発音が不明瞭になる場合があります。特に、治療開始後しばらくの間は、舌の動きが制限されることに慣れない為、話しにくさを感じることが増え、装着する事がストレスになることも考えられます。その為最初は発音練習が必要になるかと思われます。このような違和感は最初の1~2週間で慣れることが多いので、過度に心配せずお子様を見守ってあげましょう。

根気よく装着を続けなくてはいけない

自分で着脱できるというメリットはデメリットでもあります。取り外し可能な装置ゆえに、装着時間が短くなると、治療が一向に進まないこともあります。床矯正治療は、お子様自身のやる気とご両親の協力が必要です。治療期間は個人差がありますが、数ヶ月から数年にわたりますから、根気よく続けなくてはいけません。

床矯正を正しく行う工夫

なくさない工夫

①ケースのふたを上下逆に開けると装置を落としそうになるので、ケースの上側にシール で目印をつける。名前を書いたり、イラストを書くと「自分のモノ」と思うようになるの で、無くさないように心がけてくれます。

②色々な所に置く癖をつけてしまうと紛失する可能性が高い為、食事のテーブルや洗面所 に、外した時の床矯正装置を置く場所をきめている(床矯正装置を置くコーナーを作る)

③学校に持っていくポーチに歯ブラシやハンカチも入れて、床矯正用のケース入れてポーチ を持ち歩いてもらう。「このポーチは〇〇さんの大切なポーチ」と先生や皆や家族に理解してもらって、忘れたら声をかけてもらうと無くさなくなる。

 

きちんと進める工夫

⚪︎お風呂に入っている時間や通学時間にも装置をはめてつけている時間を長くする

⚪︎テレビ番組を見る曜日や時間にネジを巻くようにして巻忘れを防止する

⚪︎巻いた日はカレンダーにシールを貼ったり、時間を書いたりして進める

⚪︎携帯電話のアラームをセットして巻忘れを防止

 

楽しく進める工夫

⚪︎うまく矯正が進み、結果が出ればご褒美を用意する

⚪︎学校で装置をつけている場合は、学校の先生や友達に説明して理解してもらう

⚪︎保護者や歯科医師から学校の先生に手紙を書いてもらう

⚪︎装置ケースをデコレーションし楽しむ心を持ってもらう

床矯正治療Q&A

Q.何歳からはじめればいいの?
A.小学生の低学年から始めることが多いです。
  床矯正治療は、顎を拡げることで、歯が並ぶスペースをつくる矯正治療です。
  そのため、“顎の成長”や“歯の生え変わり”を利用できる成長過程の子供(4歳~)に
  向いています。お子様の歯並びが少しでも気になりましたら、お早めにご相談される事をおすすめいたします。
Q.床矯正治療は痛いの?
A.ほとんど痛みはありません。
もちろん、矯正装置を着けたり、装置を調整した後の数日間は多少の痛みや違和感を覚えることがあります。また、成長期のお子様は成人と比べて顎の骨が柔らかいので、痛みや違和感も軽度です。全く痛くないとおっしゃるお子様も少なくありません。なので痛みをあまり感じる事なく床矯正を進めていく事ができます。
Q.治療期間はどのくらいかかるの?
A.平均すると2~3年程度です。
矯正治療を開始する時期や不正歯列の程度などにより、治療期間に大きな違いが出ますが、平均すると約2~3年程度です。小児期の矯正は、乳歯が永久歯に生え変わるまでの治療をさします。永久歯列が完成するのが平均12歳頃なので、それまでが治療期間ということになります。その後も、引き続き治療が必要な場合やもう少し歯並びをよくしたいなどありましたら、本格(Ⅱ期治療)矯正治療へと進みます。
Q.床矯正装置にはすぐ慣れますか?
A.すぐに慣れるお子様がほとんどです。
矯正装置を始めて着ける際は、多少違和感があるので嫌がるお子様や、恥ずかしさからつける事を躊躇してしまうお子様もいらっしゃいます。しかし、成長期のお子様は適応力が高いので、慣れるまでにそう時間はかかりません。はじめは、テレビを見ている時間など着けて慣れていき、徐々に装着時間を伸ばして行きます。矯正治療をすれば「かっこ良くなるよ」や「可愛くなろうね」など嬉しくなるような言葉をかけていただけると、きっとお子様も頑張ってくれると思います。なのでお子様に矯正装置をつけようねと意欲付けをしてあげる事がとても大切になってきます。

Q.矯正治療中、食事や歯磨きはどうなるの?

A.取り外せるので問題ありません。床矯正治療は、お子様自身で取り外せる装置を使います。したがって、食事や歯磨きの心配はありません。また、大事な場面では、外しておくことも可能です。歯磨きに関しては、矯正治療を始めるお子様の歯並びは通常良くないので、歯磨きが難しいことも少なくありません。したがって、定期的に歯科医院でのクリーニングやフッ素を塗布していただくことをおすすめします。また歯並びが悪いが故、適切な歯ブラシの使用が難しい事もあるとおもいますので、歯科医院で歯磨きの仕方を教わる事も良いかとおもいます。
Q.永久歯を抜くことはあるの?
A.床矯正は、永久歯を抜かないことを目標にしています。
床矯正治療の目的は、顎の成長を促して永久歯が生えてくるスペースを確保することです。イコール「永久歯を抜かない」ことを目標にしています。ただし、不正歯列が非常に重篤な場合で小児期の床矯正治療だけでは治りきらない症例においては、本格(Ⅱ期)矯正治療で抜歯が必要になってしまうことも稀にあります。その為、「永久歯を抜かない」とは言い切る事は難しいですが、なるべく抜かないように治療を進めさせていただきます。

まとめ

紹介させていただいたように、床矯正は手軽に行えて痛みも少なく、治療費も比較的安くできる治療法ですが、すべてのケースに適応できるわけではありません。歯並びを細かく整えるのであれば、別の治療法もあります。なので歯並びでお困りの事がであれば、まず矯正相談を受けることをおすすめします。

下記の画像をクリックしていただくと当院のHPに飛びますので、良ければ一度ご覧ください。

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