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歯を失ったら・・・

2025.02.04

歯を失う原因

歯を失う原因は様々ありますが、その中でも2大要因は虫歯と歯周病です。一般的に歯は奥歯から失われる傾向にあり、比較的若いうちはむし歯で失われる場合が多いのですが、残った歯が少なくなるにつれて歯周病で失われる歯が多くなります。また歯周病は、糖尿病や心臓病と同じ仲間の生活習慣病に位置づけられています。

抜歯の原因は?

ほとんどの歯は歯科医院での抜歯処置を経て喪失に至ります。歯周病が進行して歯がグラグラになり自然に脱落する歯もありますが、歯が失われる場合のほとんどは歯科医院での抜歯と考えて差し支えないと思います。歯が失われる原因で最も多かったのが「歯周病」(37%)で、「むし歯」(29%)、「破折」(18%)、「その他」(8%)、「埋伏歯」(5%)、「矯正」(2%)の順でした。抜歯原因を年齢階級別にみますと、「歯周病」と「破折」による抜歯は中高年、「埋伏歯」と「矯正」は若い年代に多く、「むし歯」はどの年齢層でも多くなっています。

①歯周病が進行し歯が抜けた場合

歯周病は日本人が歯を失う最も大きな原因です。歯周病とは、歯周病菌が増えて起こる病気です。歯垢の中の歯周病菌が増え続け、炎症を起こして、歯を支える組織を破壊していきます。厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、歯周ポケット4mm以上(軽度歯周炎)の人の割合は、年齢が高くなるにしたがって増加し、45~54歳の場合で約半数となります。
また、歯周ポケット6mm以上(重度歯周炎)の人の割合も、年齢が上がるごとに高くなっています。歯周病の初期は、痛みなどの自覚症状がないため、歯周ポケットが深くなってはじめて、お口のトラブルに気づくことが多いようです。

歯茎からの出血や歯茎の腫れなどの症状が伴うものの、痛みは感じにくいため知らない間に歯周病が進行してしまいます。歯周病が悪化すると歯を支える骨(歯槽骨)がなくなってしまい、自然に歯が抜けてしまいます。

②虫歯が進行し、抜歯せざるを得ない場合

歯周病の次に多い歯を失う原因は虫歯です。虫歯が進行して歯髄(神経や血管を含む組織)まで到達すると痛みを伴うことが多く、そうすると通常は抜髄・根管治療を行います。根管治療を行うことで、患者さんが感じる痛みはなくなり、安心と言いたいところですが歯自体の寿命を考えると安心できません。というのも、歯は歯髄から血液が供給されその強度を保っています。神経を抜く(抜髄)することで血液の供給源が絶たれます。いわば、枯れてしまった植物のようになってしまうのです。枯れた植物の葉は落下し、枝も簡単に折れてしまいます。この状態が歯にもあてはまります。神経を抜いた歯は折れやすく、欠けやすくなり、歯の寿命が極端に短くなります。神経を取ってしまった歯の寿命は約30年ほどと言われています。

歯を失った時の治療法

歯を失った場合、患者さんの口腔内の状況に応じて失った部分を補う治療法がいくつかあります。それぞれの治療法とメリット・デメリットを紹介します。

インプラント

インプラントは、歯が抜けた部分に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。骨を削って治療をする外科手術です。そのため手術が必要で、治療期間も長めですが、インプラントが骨に結合されているため、人工歯をしっかり固定でき、自分の歯に近い感覚を取り戻すことができます。インプラント体はチタン製で、生体適合性が高く、顎骨としっかりと結合することで安定性も得られます。入れ歯やブリッジのように、残っている歯に負担をかけずにすむのも大きなメリットです。ですが保険適用外の治療のため、ブリッジや入れ歯に比べて高額になってしまいます。

◎メリット

インプラントの最大のメリットは、隣接する健康な歯に影響を与えずに独立して歯を補えることです。また、骨に直接固定されるため、噛む力も天然歯とほとんど変わらず安定性が非常に高いです。見た目も自然で、審美的に優れています。さらに、骨の退縮を防ぐ効果もあり、長期的に顎骨の健康を保つことが期待できます。また、インプラントは自分の歯と同様に感じられるため、食事や会話の際の違和感がほとんどありません。また、メインテナンスをしっかり行うことで長期間使用することができます。

◎デメリット

インプラントのデメリットは、手術が必要であること、治療費が高額であることです。また、治療期間が長く、骨の状態によってはインプラントを埋め込めない場合もあります。手術後のケアも重要で、3~6カ月間での定期的な歯科でのメンテナンスが求められます。特に、糖尿病や喫煙などの全身的なリスク因子がある患者様では、治癒の遅れや感染リスクが高まることがあるため、慎重な対応が必要です。

義歯・入れ歯

入れ歯は、歯が抜けた部分に装着する人工の歯です。抜けた部分だけを補う部分入れ歯と上顎もしくは下顎、もしくはその両方の全てを補う総入れ歯があります。部分入れ歯は残っている歯に「クラスプ」という金属製のバネを歯に固定して使用し、総入れ歯は全ての歯がなくなった場合に使用します。取り外しができ、日々の清掃が必要です。入れ歯は歯茎の上に直接乗せる形となるため、歯茎への圧力を分散させる役割も果たしますが、顎の骨を支える刺激が少なくなるため、長期的には骨の吸収を抑制することが難しいです。インプラントやブリッジに比べると、安定性が悪く、噛む力が弱くなりがちです。上の入れ歯は、唾液で口蓋の粘膜にくっついているだけなので、硬いものを前歯で噛もうとすると外れることがあります。また、下の入れ歯は舌を動かすとずれて、喋りにくくなります。また、入れ歯は使い続けると、そのうち歯肉が萎縮したり、経年により顎の骨が吸収して合わなくなることがあり、その都度調整であったり、作り替えが必要です。

◎メリット

入れ歯の最大のメリットは、保険診療で作製することが可能な為、比較的低コストで歯を補える点です。また、手術も不要で、多くの患者様にとって負担が少ない治療法です。ブリッジのように両隣の歯を削らずに済むため健康な歯を残すことができます。噛み合わせの調整も比較的容易に行えます。また、総入れ歯の場合、全ての歯がない状態でも治療が可能で、口腔内全体の機能回復が目指せます。

◎デメリット

入れ歯に慣れるまでに時間かかってしまったり、装着に違和感を感じ、滑舌が悪くなったり喋りにくい点があげられます。また安定性がない為、食事の際にずれやすく、食事を摂取しにくくなり、硬い物を噛むのは困難です。また、歯茎への負担が大きく、長期的には骨が痩せてしまうこともあります。さらに、日常的な取り外しや清掃の手間がかかり、清掃を怠ってしまうと入れ歯に臭いがついてしまったり、汚れが付着したままになる為、不潔な状態となります。入れ歯が適切にフィットしていない場合は、粘膜に潰瘍ができることもあります。また、保険診療で作製できるメリットがありますが、金属のバネが見えてしまうため審美性には欠けてしまいます。

 

ブリッジ

ブリッジとは失った歯の両隣があるときに行える治療法です。両隣の歯を支えとし、被せ物を入れる治療法です。こちらの治療法はインプラントのように外科的処置が必要なく、保険適応もしくは保険外診療で治療を受けることができ、且つ少ない治療回数で治療を終えることができます。使用する材質により、自分の歯と同じような外観を取り戻すこともできます。ブリッジは、なくなった歯の両隣の健康な歯を削って支台にし、その上に人工歯を固定する治療法です。失った歯を補うための橋渡しとなるため、見た目にも自然で違和感が少ない特徴があります。ブリッジは固定式のため、入れ歯のように取り外しをせず、しっかりとした噛む力を確保することができます。ですがブリッジの構造上、失われた歯の両隣に歯がなければなりません。一番奥の歯が失われている場合には、ブリッジはできないのです。

◎メリット

ブリッジのメリットは、しっかりと固定されるため、噛む力が強く安定していることです。また、固定式なので、入れ歯のように取り外す必要がなく、自然な使用感が得られます。審美的にも優れており、歯並びに調和します。また、治療期間が比較的短く、迅速に機能を回復させることが可能です。

◎デメリット

ブリッジのデメリットとして、支台となる健康な歯を削る必要があることが挙げられます。そのため、健康な歯に負担がかかり、将来的にむし歯や歯の寿命が短くなるリスクがあります。また、無くなった部分を両隣の歯が補うので、支台となる歯に負担がかかってしまい予後もあまり良くありません。また、ブリッジの下に食べ物が詰まりやすいため、スーパーフロスを使って清掃するなど、入念な清掃が必要です。支台歯の状態によっては、将来的にブリッジ全体を再治療する必要が生じることもあります。

▼インプラントが選ばれる理由

インプラントは、入れ歯やブリッジと比較して高額であるにもかかわらず、多くの患者様に選ばれている人気の選択肢です。その理由は、噛む力の強さと安定感、そして見た目の自然さにあります。入れ歯は取り外しが必要で安定感に欠ける一方、ブリッジは隣の健康な歯に負担をかけるリスクがあります。インプラントはこれらのデメリットを回避し、長期間にわたって自分の歯に近い感覚を維持できるため、多くの方に支持されています。また、インプラントは骨と結合することで顎骨の退縮を防ぎ、口腔全体の健康を保つ効果もあります。

 

歯が抜けた場所をそのままにしてもいいの?

歯が抜けてしまった場合そのままにしてはいけませんので、歯科医院で診察をしてもらいます。歯を失ったまま放置すると次のような症状に悩まされることになります。

①噛む機能が低下する

歯の大切な機能は物を噛むこと(咀嚼)。そして、歯1本1本に重要な機能があります。1本でも欠けてしまうと、噛む機能が低下してしまいます。また、咀嚼がきちんとできないと唾液の分泌が不足してしまい、消化を妨げてしまいます。唾液は口の中を綺麗にする自浄作用があるため、唾液の不足は口臭の原因にもなってしまう場合もあります。

②栄養の吸収にも関連します

食べ物をしっかり咀嚼できないと、栄養の吸収が充分にできなくなってしまいます。咬み合わせのバランスが崩れると食べ物をきちんと咀嚼することができず、消化しにくい状態で食べ物が胃腸に送られることになり、胃や腸への負担が増加します。

③審美性が損なわれる

前歯部が失われると、お顔の印象が変わります。抜けた歯の位置や人によっては見た目を気にして、大きな口をあけて笑うことがなくなったり、人とのコミュニケーションを取らなくなってしまうこともあるようです。人の口元を意識してジロジロと見ることはあまりないかもしれませんが、口の中に歯がないことに気がつくと、つい気になってそこばかり見られてしまうかもしれません。歯が1本無いだけでも、人に与える印象は大きく変わってしまうのです。日々暮らしていく中で、他の人に与える印象はとても重要ですので、審美性という面からも歯が抜けたら処置を施した方が良いでしょう。

④歯みがきがしにくく、虫歯や歯周病になりやすい

歯が抜けてしまうと歯ブラシが当てにくくなり、歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目からむし歯や歯周病が進行してしまいます。予防していくためにも歯が綺麗に並んでいることは重要な事です。

⑤歯が抜けた箇所に隣の歯が倒れてきたり、歯が伸びてしまう噛み合わせが悪くなる

歯が抜けたまま放置をしてしまうと、歯が横に倒れてきたり、噛み合う歯がなくなってしまうと、歯が伸びてきてしまいます。歯が倒れてしまうと歯を補うスペースがなくなってしまう為、治療ができない時があります。また、歯が伸びてくると歯茎に当たり痛みがでたり、頬の肉を噛みやすくなってしまいます。

⑥歯を支える骨が溶けることで、歯ぐきの位置が下がってくる

歯を失ってしまうと、歯ぐきが下がっているように見えてきます。 しかし、これは実際には歯ぐきが下がっているのではありません。歯を支えているのは歯ぐきではなく、歯槽骨という骨です。この歯槽骨が歯を失ってしまったことによって機能しなくなり、その幅と高さを徐々に減らしていってしまうのが原因です。
あまりに歯槽骨が衰えてしまうと、いざ入れ歯やインプラント治療を受けようとしても、治療が困難になったり、骨造成の手術をしなければならない可能性があるなど、身体や費用の負担がより大きなものになってしまうことがあります。

⑦顔の輪郭が変化して、老けて見られてしまう

奥歯を失うと、頬のラインや顎のラインが内側に寄ってきます。
歯を失ってから時間が経つと、歯ぐきも下がってくるので、頬がこけて見えたり、顎がたるんで見えたりします。また、前歯の場合は口元にシワが寄りやすくなり、全体的に老けた印象になります。歯が抜けたままにしておくと、見た目にも大きな影響が出てしまうのです。また、若い人が歯を失うと、年齢以上に老けて見られることがあり、コンプレックスになることもあります。

⑧息が漏れて、上手く発音が出来なくなる

歯が抜けた部分から息が漏れて、発音が不明瞭になってしまう場合もあります。
そのような発音障害を気にして、人と話すのを抵抗を感じて塞ぎがちになると、心理面にも悪影響を及ぼします。また、前歯が抜けた場合、特定の音を発音するのが難しくなり、言葉が不明瞭になることがあります。特に「サ行」や「タ行」などの発音は歯が重要な役割を果たしており、日常会話に支障をきたすことがあります。

⑨脳への刺激が減少することで認知症リスクが高まる恐れも

歯と脳は深い関係にあります。咬むことで脳に刺激が与えられるのですが、歯を失い咬み合わせがずれることによって、この脳への刺激も減少することになり、認知症のリスクが高まる傾向にあります。インプラントや入れ歯で咬む機能を回復させ、毎日しっかりと咬むことで脳の血流量が増加し、日々脳の活性化を促すことができます。

”8020”を目指そう

8020(ハチマルニイマル)運動をご存じですか?8020運動は、1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。そのため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動が始まりました。

最後に

歯を失った場合は歯を抜いたまま、失ったまま放置しておくと、様々な問題が起こることがお分かりいただけたでしょうか。歯を抜いた後に放置したことによって起きたトラブルを改善するには、かなり大掛かりな治療が必要となる場合が多くあります。歯を抜いた後に放置せずに、すぐに対処していればこんな大問題にはならなかったのに…、と後悔することのないように、
インプラントや入れ歯、ブリッジ治療など、しっかりと最後まで治療をするようにしてください。また、楽しく充実した食生活

を送り続けるためには、妊産婦を含めて生まれてから亡くなるまでの全てのライフステージで健康な歯を保つことが大切です。ぜひ「8020」を目指し、生涯ご自身の歯で食事できるよう歯を大切にしていきましょう。

 

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