インビザライン矯正とは
インビザラインは、米国アライン・テクノロジー社が1999年に米国の矯正歯科医師を対象に提供を始めたマウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置で、従来のワイヤー矯正とは全く異なり、透明のマウスピースで見た目を気にすることなく進めることができるマウスピース矯正です。
インビザラインは以下5つの技術が特に優れており、常に研究開発への投資を続けているためこれまで優れた実績を納めてくることができたのです。
- 治療計画と製造のデジタル化
- 生体力学
- 素材
- 3Dデザイン&モデリング
- データ分析の機械学習と口腔内スキャン
事前に治療完了までに歯がどのように動いていくかを確認できるのも大きな魅力で、予測実現性にも優れた歯列矯正治療を実現しています。そのため現在では世界の100ヶ国以上で提供され、1,500万人を超える方がインビザラインによる治療を受けており、世界一の治療実績を生み出しています。
インビザライン・システムのメリット
・目立ちにくい:アライナーは透明に近く目立ちにくいため、装着していることがほとんどわからず、見た目によるストレスが軽減されます。
・取り外しができ、衛生的:食事や歯磨きの時はアライナーを取り外すことができるため、普段通りに歯のお手入れができ、口腔内を衛生的で健康な状態に保つことができます。
・口腔内トラブルが少ない:アライナーは金属を使用しないため口の中の違和感が少なく、矯正装置が外れてしまうなどのトラブルの可能性も少なくなります。
・お手入れが簡単:マウスピースを取り外してそのまま洗えるので、お口の中をいつも衛生的に保つことができます。フロスなども通常と同じように使用できます。また食事の時には取り外すことができるので、ワイヤー矯正のように器具に食べ物が挟まることもありません。
・治療中の痛みが少ない:金属のワイヤーで歯をしめつけることがないので、通常の矯正に比べて痛みが少ないです。マウスピースの薄さも0.5mmで歯の移動をサポートするために力を加えながらも、自然な付け心地を追求した素材が使用されている為、違和感も少ないです。
・様々な歯並びに対応:デコボコした歯並びや出っ歯、すきっ歯などの様々な歯並びの改善に適応できます。
・通院回数が少ない:1か月~4か月に1回のご来院でいいので通常のワイヤー矯正に比べ通院回数が少なくすみます。
インビザライン・システムのデメリット
・長時間の装着:長時間(20時間以上/日、目標22時間)歯に装着する必要があります。装着時間を守れないと計画通りに歯が動かなかったり、治療が長引いて無駄な時間や費用がかかったりすることもあります。
・自己管理:インビザラインは装着時間を守ったうえで、患者様自身でお手入れなどしていただく必要があります。
・一部適応外の症例も:重度の叢生や八重歯、出っ歯など歯を並べるスペースを確保するために複数の抜歯が必要なケースや骨格に問題があるケースはインビザライン矯正が難しいケースとなります。
インビザライン矯正とインビザラインGoの違い
インビザライン Goは、インビザライン矯正の中で前歯部を対象にした歯列矯正システムです。以下のように、前歯(中切歯)から、奥歯2本(親知らずを含めれば3本)を除く第二小臼歯までが矯正の対象になります。
通常のインビザライン矯正と同じくアライナーと呼ばれる透明の取り外し可能マウスピースを装着して歯並びを矯正するシステムで、軽度の前歯のズレや隙間の矯正など、歯並びの乱れが軽度の方の歯牙移動に使用されます。全体的な噛み合わせに問題があったり、前歯の不正咬合の状態がひどい場合には適用できません。
インビザライン治療の流れ
Ⅰ.お口の中の写真撮影、レントゲン及び光学スキャニング「iTero Element」にてデジタルスキャンを行い、現状の状態を把握します。光学スキャニングをもとに治療計画のシミュレーションを行います。
Ⅱ.当院で治療を受けられる場合、さらに精密検査を行い、アライン・テクノロジー社が独自に開発した3D治療計画ソフトウェアを使用し、ドクターは患者様の歯科記録に基づきカスタマイズされた3Dの治療計画を作成します。この3Dの治療計画では、予測される最終的な歯並びが示されるほか、おおよその治療計画も提示されます。
Ⅲ.カスタマイズされたアライナーが作成され、当院に届きます。
Ⅳ.アライナーを受け取り(通常2~3セット)、患者様には毎日装着していただき、1~2週間ごとに患者様自身で新しいアライナーに交換していただきます。
Ⅴ.約4~8週間ごとに受診しドクターから治療の進行状況の確認や次のアライナーのセットを受け取ります。
Ⅵ.治療が完了し歯並びが整ったら、一定期間は保定装置を装着して後戻りを防ぎます。
治療可能な症例
インビザライン矯正で治療可能な症例は多岐にわたります。下記のような噛み合わせは不正咬合といい、不正咬合にはそれぞれ原因と人体に及ぼす影響があります。
不正咬合の原因と人体に及ぼす影響
【空隙歯列】
空隙歯列(くうげきしれつ)は、一般的には「すきっ歯」とも呼ばれます。歯と歯の間に隙間があいており、歯がまばらに生える状態です。空隙歯列が起こる原因として顎が大きかったり、歯が小さいなどの他に指しゃぶりや舌などの悪癖がある、歯の本数に異常があるなどが考えられます。
空隙歯列を放置すると、以下のリスクがあります。
- 咀嚼に問題が発生する:食べ物を噛み切ることが難しくなり、消化に影響を及ぼす可能性があります。
- 発音に支障が出る:歯と歯の隙間から空気が抜けてしまい、発音がしにくくなることがあります。
- 顎の関節などに負担がかかる:噛み合わせがズレて顎に影響を与え、顎関節症などの問題が発生する可能性があります。
- 虫歯や歯周病になりやすくなる:歯と歯の間に汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
【交叉咬合】
交叉咬合(またはクロスバイト)は上下の歯を噛み合わせた時に、上下の歯列がどこかで交差している状態を指します。通常、正常な咬合では上アゴが下アゴを覆うように均等に噛み合っており、上の歯列全体が下の歯列よりもやや外側に出ています。しかし、交叉咬合の場合、奥歯の噛み合わせが横にズレていて、下の歯のほうが外側に出ていることがあります。交叉咬合がおこる原因として、上下の顎の形や歯並びの湾曲のずれや、頬づえをつく・口呼吸などの日常の癖などが考えられます。
交叉咬合を放置すると、以下のリスクがあります。
- 顎の発達に支障をきたす:正しく咀嚼できず、咬む力が顎に均等に伝わらないため、顎の発達に影響を与えます。
- 顎関節症を引き起こす原因:交叉咬合は顎関節症を引き起こす可能性があります。
- 身体的な不調を招く可能性:頭痛、肩こり、腰痛などが起こることがあります。
【ディープバイト(過蓋咬合)】
ディープバイト(過蓋咬合)は、歯を正面から見たときに、上の前歯によって下の前歯が隠れてしまう深い噛み合わせのことを指します。
ディープバイト(過蓋咬合)の原因として、上顎と下顎のバランスが悪い、奥歯の高さが足りない、前歯が過剰に長く生えているなど歯の生え方の他に、
- 乳歯の早期脱落:乳歯の早期脱落によって永久歯が傾斜。
- 虫歯などで奥歯が無くなった:奥歯が無くなり、歯のバランスが崩れる。
- 遺伝:顎の発育や歯の大きさ、歯の生え方などの遺伝。
- 癖:舌の位置、強く歯を食いしばる癖、下唇を噛んだり吸ったりする癖などによって、顎の位置や歯の生え方が変化。
過蓋咬合を放置すると、以下のリスクがあります。
- 歯茎を傷つけることがある:下の歯が上の歯茎に食い込み、刺激することによって、傷がついたり、腫れたり、口内炎になることもあります。
- 歯周病のリスクが高まる:下の前歯が上の歯茎の根元を常に刺激するため、歯周病になりやすくなり、また、上の歯茎は刺激によって歯茎が下がり、歯周病になりやすくなります。さらに奥歯の負担過重で歯周病が進行しやすくなります。
- 顎関節症のリスクが高まる:過蓋咬合の方は下顎が自由に動きにくくなり顎関節症になりやすくなります。そのため顎に負担がかかり、顎がカクカクなったり、口が開きにくくなることがありす。
- 前歯が虫歯になりやすくなる:歯は唾液の成分によって守られており、過蓋咬合によって上の前歯が出て、唾液の成分に守られないと上の前歯が乾燥しやすくなり、歯と歯の間に虫歯ができやすくなります。
- 歯ぎしり・食いしばりの悪化:歯ぎしりなどでより刺激が加わると、歯茎が極端に下がってしまうことがあります。
- かぶせ物などの補綴が壊れやすい:人工物を作るには厚みが必要です。過蓋咬合だと人工物の強度を保てる十分な厚みがないため、壊れやすくなります。
【反対咬合】
「反対咬合」は、一般的には「受け口・逆さ噛み合わせ」とも呼ばれます。上下の歯をかみ合わせた時に「下の前歯が上の歯より前に出ている状態」を指します。厳密に言えば、3本以上の前歯のかみ合わせが逆になっている状態です。
反対咬合の原因としてあげられるのは、
- 親からの遺伝:顔や声がお子様に遺伝しやすいように、歯並びや骨格も遺伝します。親が反対咬合だから必ず遺伝するというわけではありませんが、両親のどちらかが受け口の場合は、お子様もその骨格を受け継ぐ場合があります。遺伝だけでなく親御さんの癖をお子様が真似をし、それが反対咬合の原因となることもあります。
- 幼少期の癖:幼少期の子供の顎の骨は柔らかいため、唇を吸う癖や頬杖、顎を前に出す仕草が癖となっている場合、反対咬合を引き起こす原因になります。
- 下顎の過成長:成長過程で、上の顎よりも下の顎が発達し、大きくなると反対咬合になります。通常舌の位置は上の顎にくっついており、支えている状態が望ましいですが、舌が下がっていると、下の顎が発達し、上の顎と下の顎のバランスが悪いまま成長してしまいます。
反対咬合を放置すると、以下のリスクがあります。
- 成長とともに顕著な顎の変形:下顎の骨は、身体の成長に合わせて大きくなる特徴があります。身体の成長前に反対咬合を改善していなければ、症状が悪化してしまう可能性があり、その場合は簡単な治療だけでは治らなくなります。場合によっては外科的な矯正が必要になるため、反対咬合は早期の治療が大切です。
- 発話力の低下:反対咬合によって徐々に顎が変形するため、言葉をうまく発音できなくなるリスクがあります。特に「サ行」や「タ行」の発音がしづらくなり、舌っ足らずのような話し方になります。
- 咀嚼機能の低下:そしゃく機能とは、歯で食べ物を咬み、飲み込むという一連の動作のことを指します。ご飯を食べる時、上と下の歯をすり合わせてご飯を細かくしていますが、反対咬合の影響で顎の変形が進むと、歯をうまくすり合わせることが困難になるのです。
【叢生】
「叢生」とは、歯が適切な位置に並ばず、歯列に凹凸のある状態を指します。具体的には、歯の数とその収まるべき場所(顎の大きさ)とのバランスが取れていないために、歯が重なり合ったり、歯が歯列から飛び出ていたりする歯並びです
叢生は、主に以下の原因によって引き起こされます。
- スペースの不足:顎が小さいか、歯が大きい場合、歯が前後に重なってしまうことがあります。
- 遺伝:歯の大きさは遺伝的に影響を受けることがあります。
- 生え替わりの問題:乳歯を早くに失うことで、隣の歯が移動して叢生を引き起こすことがあります。
- 癖や習慣:歯を押す癖、口呼吸、頬杖などの日常生活の癖も叢生の原因となります。
叢生を放置すると、以下のリスクがあります。
- 歯周病や虫歯のリスク:叢生があると歯間のスペースが狭くなるため、一生懸命歯ブラシを行っても磨き残しがあったり、歯垢や歯石が溜まりやすく、歯周病や虫歯のリスクが高まります。また、歯が密集している部分では、歯根が露出しやすくなるため、歯周病が進行しやすい環境ができてしまいます。
- 噛み合わせの悪化:噛み合わせが悪いと、顎関節症や筋肉疲労の原因となり、顔のバランスや機能に影響を与える可能性も考えられ、慢性的な痛みや不快感が生じることがあります。
- 発音や咀嚼機能の低下:叢生の影響により発音が不明瞭になるとがあります。特に、前歯が正しい位置にない場合、舌の動きが制限され、発音が悪化するケースがよく見られます。また、噛み合わせが悪くなると、食べ物を効率的に咀嚼できなくなり、消化機能に悪影響を与えることがあります。
【オープンバイト(開咬)】
「オープンバイト(開咬)」は、奥歯を噛んだとき、上下の前歯の間に大きな隙間ができ、前歯があたらない状態のことをいいます。この状態では、うどんやラーメンなどの麺類をうまく噛み切れず、消化器に負担をかけます。また、歯のすき間から息が漏れて発音がしにくくなることもあります。
オープンバイト(開咬)は、幼少期の指しゃぶりや骨格の遺伝、口呼吸の他に、舌を前歯に押し付けたり前歯の間に舌を挟んだりする癖などが原因で引き起こされます。
オープンバイトを放置すると、以下のリスクがあります。
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奥歯に負担がかかる:開咬により奥歯しか噛めない状態が続くと、奥歯に過度な負担がかかり、その結果、歯が破損しやすくなり最悪の場合、抜歯をしなくてはいけないケースもあります。奥歯を失うと咀嚼機能や消化機能の低下を招きます。
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咀嚼障害・嚥下障害につながる:奥歯だけでしか食べ物を噛み砕けない状態になるため、咀嚼障害につながります。また、食べ物を細かく咀嚼できないため、嚥下障害(飲み込みにくい状態)を起こす原因にもなります。嚥下障害を起こすと食べ物が誤って気管に入り、誤嚥性肺炎などの重篤な病気を招く危険にもなります。
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滑舌が悪くなる:開咬は前歯が噛み合わず、その隙間から空気が抜けてしまうため滑舌が悪くなり、具体的には、舌っ足らずな話し方になったり、サ行やタ行の発音が不明瞭になりコミュニケーションに支障をきたす可能性もゼロではありません。
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顎関節症の併発・悪化:開咬になることで、奥歯に必然的に顎関節に負担がかかり、咀嚼筋が緊張を強いられるため顎関節症を発症したり悪化させることがあります。顎関節症は顎の痛みや開口障害などの不快感な症状を引き起こし、日常生活に支障をきたします。
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虫歯・歯周病・口臭につながる:開咬は口が閉じにくく口呼吸になりやすいため、口の中が乾燥し唾液量が減りその結果、唾液の自浄作用や抗菌作用が低下してしまうため虫歯・歯周病・口臭のリスクが高くなります。
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免疫力が低下する:開咬で口呼吸になると、喉の粘膜が乾燥し、細菌やウイルスの侵入・増殖が促進され免疫力低下につながります。
8020運動
1989年に厚生省と日本歯科医師会が「8020運動」という運動を提唱しました。これは80歳以上の方が自分の歯を20本以上保つことを目指すもので、健康な歯を保つことで、楽しく充実した食生活を送ることを目指しています。しかし、歯並びが悪いと、この8020運動達成率がとても低くなることが分かっており、これは将来、歯を失う可能性が高いことを指しています。実際、8020達成者の咬合状態を調べると前歯や奥歯がしっかりと嚙み合っている状態で、受け口(反対咬合)や開咬の人はいなかったという報告もあります。このことから矯正は見た目を良くするためだけの治療ではく、全身の健康状態と強く関係していると考えられます。
8020運動とは | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
負担の少ない型取り「iTero Element」
インビザライン治療を行うにあたって、当院では光学スキャニング「iTero Element」を導入しています。iTero Elementはペンタイプの口腔内スキャナーかざすだけで歯型の情報が得られます。iTeroはこれまで40万件以上の膨大な使用実績があり、
iTeroの強みは型取りの正確さだけでなく、採取した情報の保管や共有のしやすさにもあります。従来は石膏模型を保管していましたが、破損リスクが高く、保管場所も確保しなければならないため非常に不便でした。iTeroは保管の場所を取ることなく、破損や紛失のリスクもありません。iTeroで取得したデジタルデータは、クラウド上に保存されるので離れた医療機関とのデータ共有も容易です。
【iTero Elementの特徴】
- 嘔吐反射が起こりにくい:iTeroは光を照射するスキャニングによって直接、歯の形状や歯並び、噛み合わせをデータとして記録する為、シリコンなどの印象材が固まるまで待つ必要がなく、また、シリコン特有の味や臭いもないため、患者さんにも不快感が少なくやさしい型採りが可能です。
- クラウド上に保存:矯正用マウスピースを発注したいときは、デジタルデータを送信すればOKです。シリコン印象材の歯型を郵送した場合に比べて、マウスピース到着までの時間が短縮できます。万が一、マウスピースの破損や紛失が起こっても、データを元に速やかに再作製が可能です。
- 歯のすり減りや噛み合わせのチェック:矯正治療中の歯の移動の様子はもちろん、歯がすり減っていないか、歯肉退縮が進んでいないか、噛み合わせの不調は出ていないかなど、3Dデータなら比較分析し、継続的にお口の状態をチェックするうえでとても役立ちます。
- 近赤外光画像(NIRI)技術による虫歯の早期発見:歯並びや噛み合わせだけでなく、虫歯や歯石の取り残しなど1本1本の歯の状態もデータで記録できるため、一般的に発見が難しいとされる歯と歯の隣接面の虫歯も、iTeroの近赤外光画像(NIRI)技術で、早期発見がしやすいです。
口腔内スキャナー(デジタルスキャン)を使用することで、従来の歯の型取りよりも多くのメリットがあります。 今まで型取りが苦手だった人にも抵抗が少なく、快適な印象採得を可能にします。iTero Elementを用いることでデジタル技術を駆使した高精度なお口のデータ取得が可能な為、数分のスキャニングで、歯1本1本の細かな凹凸まで正確に読み取ります。また自分の現在の歯並びの状態がどうなっているのか、どのような治療方法があるのか、治療後はどう変化するのか。患者様に具体的なイメージを見ていただいたうえで、治療を開始して頂けます。
インビザライン矯正まとめ
インビザライン治療はマウスピース矯正の中で最も普及している治療法で世界中で行われています。いま現在でも新しい機能や素材が追加され、進化しつづけています。自分の歯についてインビザラインが対応可能かどうか気になる方は、一度クリニックに問い合わせてみましょう。詳しくは、石野歯科医院にてご相談・ご来院をおまちしております。