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コラム

顎関節症について

2025.05.02

「口を開け閉めする時に痛みがある」「口を大きく開けられない」「カクカクと音がする」など、顎の違和感や痛みでお困りではありませんか?このような症状がある場合、顎関節症が疑われます。顎関節症の症状や原因、日常生活で気をつけるべきこと、治療方法、そして放置するリスクについてご説明します。顎の不調を感じている方は、早めに対応するようにしましょう。

顎関節症とは

顎関節症は、顎の関節とその周囲の筋肉に異常が生じ、顎の動きに問題が起こる病気です。「口を開けると痛む」「口が開かない」「顎から音がする」といった症状が当てはまります。これらの症状は、顎の関節を構成する骨や筋肉(咬筋、側頭筋など)関節円板・靭帯などの異常によって生じます。顎関節は耳のすぐ前に位置し、上下の顎を連結して噛む・話すといった重要な動作を支えています。これらの機能が正常に保たれるためには、顎関節や筋肉、靭帯が協調して働く必要があります。何らかの原因でこれらのバランスが崩れると、顎関節症を発症します。

顎関節症の症状

顎関節症の症状は多岐にわたります。個人差がありますが、主な症状として以下が挙げられます。

①顎の痛み

口を開け閉めする際や、食べ物を噛む時に痛みが生じることがあります。痛みは一時的なものから慢性的なものまで様々で、起床時や、ストレスを感じる時に起こりやすいです。

②口が開けにくい

顎がスムーズに動かなくなり、口を大きく開けることが困難になります。開口障害と呼ばれ、悪化すると歯科治療や日常的な会話、食事にも影響が出ます。

③顎関節から音がする

口を開け閉めする際に、カクカク、ポキポキといった関節音がすることがあります。クリック音と呼ばれ、顎関節内で関節円板と呼ばれる軟骨がずれて顎の動きに異常をきたすことで鳴ります。

④耳鳴りや耳周囲の不快感

顎関節症の症状は、耳周囲にまで及ぶことがあります。耳鳴りや耳の閉塞感、さらには眩暈を感じることもあります。

⑤肩こりや頭痛

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顎の異常から、姿勢が悪くなったり顎周辺の筋肉が緊張して固まってしまったりすることで、肩こりや頭痛が発生することもあります。顎関節の異常といっても、全身に影響を及ぼすことがあります。

顎関節症タイプ別に説明

タイプ別にⅠ型(筋肉の異常)、Ⅱ型(関節靭帯の異常)、Ⅲ型(関節円板の異常)、Ⅳ型(骨の異常)、Ⅴ型(どれにも当てはまらないもの)があり、タイプによって治療法が異なります。

Ⅰ型の症状

主に顎の筋肉(咬筋・側頭筋など)の使いすぎが原因のいわゆる「筋肉痛」です。咬筋は頬、側頭筋はこめかみに痛みを生じるので、こめかみの痛みから「頭痛」と訴える患者さんもいます。これは、筋マッサージや顎を安静にしてあげることで軽減していきます。

I型(咀嚼筋痛障害)の治療法

◎物理療法
物理療法には、咀嚼筋のマッサージ、温罨法(おんあんぽう)、電気刺激療法などが含まれます。マッサージは手指を用いて筋肉に機械的な刺激を与え、血流を促進し痛みを緩和します。特に、入浴後にリラックスした状態で行うことが推奨されています。温罨法では、ホットパックや蒸しタオルを用いて組織の温度を上げ、血流増加や筋緊張の緩和を図ります。電気的に筋肉を刺激するマイオモニターやTENS(経皮的電気刺激療法)は、筋のリラックスと痛みの除去を助ける手段です。

◎運動療法
筋伸展訓練は、咀嚼筋のストレッチを通じて、筋肉の柔軟性を高め、顎の開閉能力を向上させます。この訓練は患者自身が日常的に行うことができ、朝晩のルーティーンとして取り入れることが望ましいです。訓練は痛みを伴うこともありますが、継続することで効果が期待できます。

◎薬物療法
薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンが用いられます。これらの薬剤は、痛みの原因となる化学物質の活動を抑えることで、痛みと炎症を軽減します。ただし、NSAIDsは副作用が問題となることもあるため、使用には注意が必要です。治療は安全性を最優先に考慮し、最小限の期間と用量で行われるべきです。

◎アプライアンス療法
スタビライゼーションアプライアンスは、顎関節症の治療において広く使用されています。この装置は、顎の咬合を均一に保ちながら咀嚼筋の緊張を緩和し、顎関節への負担を軽減します。通常は夜間に使用され、日中の使用は副作用のリスクが高まるため推奨されません。

II型の症状

関節靭帯の異常で、簡単にいうと顎の捻挫です。無理に口を開けすぎたり、固いものを食べたり、歯ぎしりや食いしばりでも生じます。顎関節は耳の穴の直前にあるため耳の痛みと思い、耳鼻咽喉科を受診される患者さんもいます。欠伸は控える、固いものは避ける、食事は小さくカットしてあまり大きく口を開けないようにするなど、可能な限り顎を安静にして治療します。

II型(顎関節痛障害)の治療法

◎薬物療法

薬物療法とは?がん薬物療法専門医やメリットデメリットも紹介! - 薬局経営.COM
顎関節痛の治療においては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が広く用いられます。これらの薬剤、例えばジクロフェナク、ナプロキセン、ロキソプロフェンは、顎運動時の痛みを軽減するために効果的です。これらの薬は通常、急性の痛み管理に用いられ、投与は最長で7日間とされ、痛みのコントロールと炎症の抑制を目的としています。薬物療法は頓用ではなく、時間を定めての服用が推奨されます。

◎運動療法
顎関節の可動性を向上させるために、顎関節可動化訓練が行われます。この訓練は、顎の開口制限がある患者に特に推奨され、顎の動きを促進し、関節の機能を改善するために実施されます。治療は軽度の疼痛がある場合でも継続されることが多く、痛みが強い場合には炎症が収まるのを待つこともあります。また、手技によるソフトな外力を顎関節に適用し、滑走や回転運動を促して顎の動きをスムーズにします。

◎アプライアンス療法
顎関節痛障害におけるアプライアンス療法は、咀嚼筋の痛みを管理する目的で用いられるスタビライゼーションアプライアンスと同様です。

Ⅲ型の症状

関節円板の異常です。関節円板とは、上顎の骨と下顎の骨の間に存在する、クッションのような役割をする組織です。III型の方は関節円板の位置がずれてしまっているため、口を開けると「カクカク」「ポキポキ」といった「関節雑音」を伴います。しかし、症状が「関節雑音」だけの場合は特に治療の必要はありません。一方で、関節円板のずれがひどくなると「関節雑音」が消失して「開口障害」が出現します。この場合、一般的にマウスピース治療を行いますが、効果が不十分な場合には、歯学部付属病院の顎関節専門外来などで、より専門的な治療を行なうことがあります。

III型(顎関節円板障害)の治療法

◎復位性の治療
復位性の顎関節円板障害では、基本的には円板の復位を目指さず、痛みや間欠ロックのない場合は経過観察が推奨されます。ただし、開口制限を恐れて自発的に開口を制限している場合は積極的な開口を指導します。症状が重度で日常生活に支障をきたしている場合には、運動療法や薬物療法の検討があります。

◎運動療法
運動療法では、顎関節授動術や顎関節可動化訓練が行われます。顎関節授動術は、非復位性の関節円板前方転位や間欠ロックを伴う復位性の症例に対して行われます。また、顎関節可動化訓練では、患者自身が顎の動きを重視した訓練を行います。症状が強い場合や復位が困難な場合は、専門医の紹介も検討されます。

◎アプライアンス療法
アプライアンス療法では、スタビライゼーションアプライアンスや前方整位型アプライアンスが使用されます。これらのアプライアンスは、関節円板の復位や後方偏位に起因する負担の軽減を目的としています。治療の設定は患者に合わせて調整され、関節円板の復位後には咬合再構成が必要な場合もあります。

◎そのほかの治療法
非復位性の場合は、経過観察が主な治療となりますが、痛みや開口障害がある場合には適切な治療法が検討されます。また、確定診断にはMRIによる画像検査が必要であり、必要に応じて専門医の意見を仰ぐことも重要です。

IV型の症状

関節を構成する下顎骨の関節突起の変形によるものです。このタイプは症状だけでは診断困難です。そのため、顎関節症で来院された患者さんの診断は、まず、あごのレントゲンを撮影して骨の変形がないか調べるところからスタートします。変形した骨を元通りにすることは困難なので、「痛みなく」「十分に口が開く」ことを目標にマウスピース治療や開口訓練を行ないます。

IV型(変形性顎関節症)の治療法

変形性顎関節症(Ⅳ型)の基本治療は、顎関節痛、開口障害、または関節雑音のいずれかを示す場合があり、ほかの疾患の治療と同様に対処されます。診断には関節雑音やX線検査が用いられますが、過剰な治療には注意が必要です。自然経過が良好でない場合もあるため、漫然とした経過観察は避けるべきです。下顎頭の変形やそれに伴う咬合問題が進行する可能性もあります。専門医は、下顎頭の変形や咬合不全に対処するために口腔機能回復療法や補綴歯科治療、矯正歯科治療を必要に応じて行います。

顎関節症になる原因

顎関節症は1つの要因で発症するのではなく、複数の要因が重なって引き起こされる病気と言われています。顎関節症を引き起こす要因をご紹介しますが、症状が出た場合は自己判断せず歯科医師に相談してから対処することが重要です。

①ストレス

ストレスに対する身体からのSOS 過敏性腸症候群 | サワイ健康推進課

顎関節症の発症には、心理的な要因も深く関係しています。ストレスが溜まると、無意識に歯を食いしばったり筋肉が緊張したりすることが多くなり、顎関節に過剰な負担をかけるためです。

②噛み合わせの悪さ

上下の歯の噛み合わせが悪いと、顎関節に均等に力がかからず負荷がかかることになります。歯並びの悪さだけでなく、過去の歯科治療の際の噛み合わせの調整が不適切だった場合なども、噛み合わせに影響を及ぼします。

③外傷

交通事故や転倒、スポーツ中の衝撃などで顎に直接的な外傷を受けた場合、顎関節症を発症する可能性があります。顎関節が炎症を起こしたり、関節の変形につながるダメージが残ったり、慢性的な顎関節症の原因になるのです。

④姿勢の悪さ

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猫背や前かがみの姿勢は、顎や首、肩に余計な負荷をかけて顎関節にまで影響を及ぼします。特に、長時間のデスクワークや携帯の使用など、現代の生活習慣が顎関節症を引き起こすリスクを高めています。

⑤顎に負荷をかける悪習慣

片側で噛む癖や頬杖をつく癖、食いしばりや歯ぎしりの癖も顎関節に負担をかけます。特に、自分で意識ができない睡眠中に行われる歯ぎしりや食いしばりは、顎関節や歯に過剰な負荷をかけます。

顎関節症の人がやってはいけないこと

顎関節症の症状が出ている時には、日常生活での何気ない行動が症状を悪化させることがあります。顎関節症の症状がある方が避けたほうが良い行動をご紹介します。

①硬い食べ物を噛む

硬い食べ物やガムなどを噛むと、顎に強い負荷がかかります。顎関節症の症状がある場合は、なるべく柔らかい食品を選び顎に負担をかけない食生活を心がけましょう。

②大きく口を開ける

Tengo la lengua blanca, ¿por qué? - Institutos odontológicos

痛みを感じている時に無理に大きな口を開けると、顎関節にさらなる負担をかけ症状を悪化させる可能性があります。あくびや笑う時なども注意し、なるべく顎に負荷をかけないようにしましょう。また、開閉時に音が鳴るからといって、むやみに口を開けたり閉じたりするのはやめましょう。

③片側だけで物を噛む

片側だけで物を噛む習慣があると、左右の顎にかかる力が不均等になり症状を悪化させます。食事中は両側でバランスよく噛むよう心がけましょう。

④長時間同じ姿勢でいる

前述したように、姿勢の悪さも顎関節に影響を与えます。定期的に姿勢を直したりストレッチを行ったりすることで、顎への負担を軽減できます。

⑤過度に筋肉運動やマッサージをする

顔のむくみを取って小顔に!簡単・顎関節マッサージ | ハルメク美と健康

顎の痛みや緊張を解消しようと、自己流で顎や顔の筋肉を過剰にマッサージしたり、動かしたりすると、症状を悪化させる可能性があります。正しいマッサージや運動法の指導を歯科医師にから受けて、実践しましょう。

顎関節症の治療方法

顎関節症の治療は、症状の原因や進行度によって異なります。軽度であれば、生活習慣の改善だけでも症状が緩和されることがあります。しかし、症状が進行している場合は専門的な治療が必要です。

①生活習慣を見直す

《生活習慣リズムを整えることの重要性について/カイロプラクティックアシスタント兵頭圭子》

 

顎に負担をかける生活習慣を改めることが、治療の第一歩です。硬い食べ物を避ける、姿勢を改善する、ストレスをコントロールするなどの取り組みを行います。

②スプリントを使用する

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歯ぎしりや食いしばりが原因で顎関節症が起きている場合、夜間にスプリントと呼ばれるマウスピースを装着して、顎関節への負担を軽減します。顎の筋肉の緊張を和らげ、症状を改善します。

③痛み止めなどを使う

痛みが強い場合や炎症がある場合、必要に応じて歯科医が処方した鎮痛薬や筋弛緩薬を使用して症状を抑えます。

④マッサージをする

顎関節や周囲の筋肉のストレッチやマッサージを行うこともあります。筋肉をほぐし、痛みやこりを緩和します。温熱療法や電気療法を取り入れることもあります。

噛み合わせを調整する

顎関節症が噛み合わせの問題によって引き起こされている場合、噛み合わせの調整を行います。歯の高さや形状を微調整することで、噛み合わせを改善し、顎関節への負担を軽減します。噛み合わせの不調が長期間続くと、顎だけでなく首や肩にも影響が出るため、早期に治療することが大切です。

⑥手術する

重度の顎関節症で、他の治療をしても十分な効果がなかった場合は、手術が必要になることもあります。しかし、多くの場合は手術をしなくても改善が期待できます。まずは他の治療法を試すことが推奨されます。

顎関節症の放置リスク

顎関節症は、も放置することで症状が悪化し、将来的に大きな健康リスクを引き起こす可能性があります。顎関節症を放置することで起こり得るリスクをご紹介します。

①痛みが慢性化する

顎関節症の初期段階では一時的に痛みや不快感が現れることが多いですが、これを放置すると慢性的な痛みへと発展する可能性があります。顎の痛みが耳や頭、首、肩にまで広がり、これらの部位に関連する筋肉が常に緊張して慢性的な肩こりや頭痛を引き起こします。この状態が長く続くと、日常生活に支障をきたすでしょう。睡眠の質の低下や集中力の欠如を招き、さらにストレスが増大する悪循環に陥る恐れもあります。

関節の変形

顎関節症を放置し、顎関節やその周囲の軟骨が長期間にわたって損傷を受けると、関節や軟骨が変形することがあります。変形が進んでしまうと関節が正常に動かなくなり、食事や会話などの基本的な日常動作にも影響が出ます。

③顎の開閉が困難になる

顎関節症が悪化すると、顎の動きが制限され口を大きく開けることが困難になったり、顎が固まったように感じたりする開口障害が起こる可能性があります。日常的な動作に大きな支障をもたらし、進行すると口がほとんど開かなくなって食事すら困難になることもあります。この状態が続くと、栄養不足や体重減少などの健康問題にまで発展する恐れがあります。

④精神的なストレスになる

顎関節症の痛みや不快感が続くと、心理的な負担も大きくなります。特に、顎の痛みが慢性化すると、ストレスや不安感が増し心理的な問題を引き起こす可能性もあります。また、食事や話すことに支障が出ると、社会的な活動にも消極的になるかもしれません。

顎関節症で受診すべき診療科

顎関節症の診察は、歯科や口腔外科で受けることができます。歯科医院によっては、顎関節症の診察や治療が得意でない場合があるため、あらかじめ電話などで確認しておくと良いでしょう。口腔外科を標榜している歯科医院や大学病院であれば、ほぼ間違いなく顎関節症の治療まで行えます。

まとめ

顎関節症になった女性

顎関節症は、初期段階では症状が軽いことが多いため放置する方も少なくありません。

しかし、症状が進行すると慢性的な痛みや関節の変形、開口障害など、深刻な問題に発展する可能性があります。顎に違和感や痛みがあれば、早めに歯科医師に相談して適切な治療を受け、将来のリスクを回避しましょう。顎関節症の治療のゴールは、「痛みなく」「十分に口が開く」ことです。「関節雑音」を手術で治療していた時代もありましたが、現在では症状が「関節雑音」だけの場合は治療の必要はないとされています。

 

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